ジストニア・ジスキネジア

<疾患概念>
ジストニアは、筋の異常収縮を生じる中枢性疾患です。咀嚼筋に生じたものは、特にOromandibular dystonia(口顎部ジストニア)と呼称されています。この場合の臨床症状は、開口障害(不随意のくいしばり)や下顎の偏位、反対に口が開いたままで閉口不能になる、などです。開口障害や下顎の偏位が主訴である場合には、顎関節症と誤認されることが多いので、要注意です。
ジストニアの治療は、神経内科に依頼します。(薬剤性のものは、精神科医と話し合う。)

<口顎部ジストニアの臨床症状>
A) 咬筋のジストニア
・自分の意志に反してくいしばってしまう
・見えないマイオモニターを装着しているかのように、咬筋の収縮が肉眼で観察できる

B) 外側翼突筋のジストニア
片側のみが罹患した場合
・顎が片方に偏位したきりになる。

両側が罹患した場合
・開口したままで、自分の意志では閉口できない
<原因による分類>
特発性(原因不明)のものと症候性のものに大別されます。
特発性のものは、大脳基底核や中枢神経系のなんらかの障害で生じると考えられていますが、詳細はよくわかっていません。症候性のものには、薬剤性(抗精神病薬またはパーキンソン病の治療薬の副作用で生じる)や、変性疾患(説明)・脳腫瘍などのさまざまな神経疾患で生じます(「OFPを知る」P143)。

<診断のヒント:D2-blocker服用の有無を確認する>
歯科医が臨床で遭遇するジストニア(ジスキネジアも同じ)の多くは、薬剤性のものです。脳内のドーパミン2受容体遮断作用を持つ薬物(D2-blocker)*は、副作用として、急性あるいは遅発性のジストニアやジスキネジアなどの不随意運動(錐体外路症状)を引き起こす可能性があります。代表的な薬物は「抗精神病薬(統合失調症の治療薬)」です。 したがって、問診で薬剤服用歴・・つまり「何か薬を飲んでいませんか」という質問をすることが重要です。
*リスパダール、ジプレキサ、セロクエル、ハロペリドール、PZC、ドグマチール、など

<治療>
・特発性の場合
抗コリン薬(アーテンR、アキネトンR)、ベンゾジアゼピンや筋弛緩薬が使われます。ベンゾジアゼピンでは、セルシンR40mg/dayを使った症例があります。GABA作動薬が奏効することは知られており、筆者らはバルプロ酸ナトリウム(デパケンR)が著効した例を報告しています。欧米では、Gabapentineも使われています。

・ 薬剤性の場合
急性の場合は、抗コリン薬が著効しますが、遅発性ジストニア・ジスキネジアは極めて難治となります。原因となっている薬を中断すれば解決する可能性がありますが、もとの病気が増悪する可能性があるため、処方している医師と相談する必要があります。