SUNCT(結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作)

3.3 SUNCT(結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作)
<診断基準>
解説:本症候群は、一側性の痛みからなる短期持続性の発作を特徴とする。発作はその他のTACよりもはるかに短く、顕著な流涙および同側眼の充血を伴うことが極めて多い。

A. B-Dを満たす発作が20回以上ある
B. 一側性の刺すような痛みまたは拍動性の痛みが眼窩部、眼窩上部または側頭部に5~240秒間持続する
C. 痛みは同側の結膜充血および流涙を伴う
D. 発作頻度は3~200回/日である
E. その他の疾患によらない (注1)

注:1.病歴および身体所見・神経所見より頭痛分類5~12を否定できる、または、病歴あるいは身体所見・神経所見よりこれらの疾患が疑われるが、適切な検査により除外できる、または、これらの疾患が存在しても、初発時の発作と当該疾患とは時期的に一致しない。

コメント:本症候群は、国際頭痛分類第1版の出版後に報告され、この10年間で十分に認識されるようになった。
結膜充血または流涙のいずれか1つのみが認められる場合もあれば、これ以外の頭部自律神経症状(鼻閉、鼻漏、眼瞼浮腫など)が認められる場合もある。
3.3「SUNCT」は、A3.3「頭部自律神経症状を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNA)」(付録に記載)のサブフォームと思われる。
文献では、3.3「SUNCT」の最も一般的な類似疾患は後頭蓋窩の病変または下垂体に関連するものが示唆される。

<文献>
Boes CJ, Swanson JW.
Paroxysmal hemicrania, SUNCT, and hemicrania continua.
Semin Neurol. 2006 Apr;26(2):260-70. Review.

歴史
1978年に、Sjaastadらによって最初に報告され、1989年に完全な形で報告された。IHSは2004年に診断基準が示された。

疫学
稀な疾患で、現在までに英語文献で発表された完全例は50例。男女比は1:3から1:1。典型例では35-65歳(平均50歳)で発症する(10-77歳までの幅)。

臨床的特徴
眼窩や眼窩周囲に生じる、非常に短時間の片側性の激痛発作で、著明な結膜充血、と流涙を伴う。疼痛部位は、前頭部や側頭部であることもある。疼痛は、鼻、頬、耳、口蓋に放散する。疼痛の性状は、突き刺すような、灼熱性の、電撃性などと表現される。通常2-3秒で痛みのピークに達し、発作が終わるまでそのままの状態が続く。

結膜充血、と流涙が主な自律神経症状であるが、その他に鼻閉、鼻漏、眼瞼浮腫、眼瞼下垂、縮瞳、顔面紅潮・発汗が報告されている。悪心・嘔吐・光過敏・音過敏はSUNCTには通常随伴しない。

それぞれの発作は非常に短時間で、5-250秒(平均49秒)である。しかし、2時間持続した例も報告されている。発作と発作の間には疼痛は生じない。発作回数は、1日1回から1時間に30回と様々である(平均16回/日)。発作は日中に生じ、夜間に生じることは稀(せいぜい1,2%)である。

発作の起こり方は様々で、発作期と寛解期がある。発作期は年に1-2回で、それぞれ数日から数か月間。最高で年に22回の発作期が報告されている。寛解期は数か月だが、8.5年のものも報告されている。時間とともに、発作期の回数と長さが多くなっていく傾向がある。発作期が1-17年のケースの報告がある。

発作は、三叉神経の支配領域(通常2・3枝)に触れることで誘発される。顔や頭皮への、接触、洗顔、ひげそり、食事、歯磨き、鼻をかむ、会話、咳漱など。

発作は片側性であるが、両側性のものや、サイドが入れ替わるものも報告されている。

鑑別疾患
・ 後頭窩や下垂体部の疾患による二次性のものが報告されている。したがって、SUNCTが疑われる場合は、脳のMRIを行う必要がある。
・ 第1枝の三叉神経痛(TGN)。HISの診断基準では、疼痛持続時間が数秒~2分となっており、SUNCTとのオーバーラップがある。TGNは数秒であるが、SUNCTは1分。痛みもTGNの方が強い。第1枝のTGNは、三叉神経痛の4%と稀。TGNであればカルバマゼピンが著効する。SUNCTなら自律神経症状を伴うことも鑑別の要点。第1枝のTGNでは、流涙は生じない。)
・ 発作時間が短い発作性片側頭痛(PH):しかしPHはインドメタシンでコントロールできる。
自然経過
1997年の患者21名のreviewでは平均11年だが、10名は10年以上で、最長では48年。
治療
他のTACsに比較して、難治である。インドメタシンは無効。カルバマゼピンがいくらか有効だったケースもある。Lamotrigineを100-300mg/dやギャバペンティン800-2700mg/dが奏効したという報告がある。Topiramate50mg/dで完全に痛みが消失したという報告がある。ステロイド、リドカイン(i.v.)、フェニトイン、スマトリプタン(S.C.)は効果なし。
方針としては、。Lamotrigine→ギャバペンティン→Topiramateの順で試みる。

外科療法:末梢のブロックは無効。Microvascular decompression、三叉神経節compression、glycarol rhizotomy、superior cervical ganglionのopioid blockageが有効だったという報告がある。しかし、長期の予後を観察していないので、外科療法の効果の評価は困難である。全てに失敗して、anesthesia dolorosaや患側の聴覚喪失だけが残った患者もいる。外科療法は、最後の手段と考えるべきである。