PHーTic:三叉神経痛が併存する発作性片側頭痛(発作性片側頭痛-チック[三叉神経痛]症候群)
文献要約
The paroxysmal hemicrania-tic syndrome
CJ Boes, MS Matharu & PJ Goadsby
Cephalalgia, 2003, 23, 24-28
<ポイント>
・症例1はCPH、症例2はEPHである。
・ 症例1ではPH発作は誘発でき、症例2では誘発できない。
・ 2種類の痛みの部位にはオーバーラップが見られる。
・ 2種類の痛みは、別個に生じるが、同時に生じることもある。
・ 症例1,2とも、PH様の痛みは、発作と発作の間に軽い鈍痛がバックグランドペインとして存在する。
・ PH様の痛みと三叉神経痛様の痛みは、それぞれ別個に治療すべきものである。
症例1
67歳女性。15年間2種類の痛みに悩まされていた。
第1の痛みは群発頭痛様で、年に1-3か月の期間だけ、1日8-10回の、各20-30分持続する痛みが夜間も日中も生じる。
疼痛部位は、絶対に右のみ、眼窩を中心に前頭部、側頭部、鼻、頬、上下顎の歯、顎、下口唇に生じる。激痛で、拍動性と穿刺性の痛みが重なって生じる。患側の眼瞼下垂、眼瞼浮腫、流涙、鼻漏を伴う。発作中はじっとしていられず、動き回る。悪心、嘔吐を伴うが、光過敏、音過敏、臭い過敏はない。誘発因子は、下口唇に触れる、会話、咀嚼、歯磨き、風が顔に当たることなどである。アルコールでは発作は誘発されない。
第2の痛みは、毎日、日に4-5回、各1-2秒の痛み。しかし、30秒ごとに生じることもある。やはり右のみで、右下口唇と歯に生じ、顎、頬、耳に放散する。
2つの痛みは、通常別々に生じるが、同時に起こることもある。
<治療>
インドメタシン50mgを1日3回服用したら、2つの痛みは完全に消失→1ヶ月後に再発↓
第1の痛みは、インドメタシン50mgを1日4回服用することで完全に消失。
第2の痛みは、カルバマゼピン200mgを1日4回で消失。
症例2
60歳男性。2年間、間歇的に2種類の痛みに悩まされていた。
第1の痛みは、最大級の激痛で、1日10-20回、各15-35分持続する発作が日中に生じる。
疼痛は、左前頭部、側頭部、眼窩を中心に生じる。流涙、結膜充血、鼻閉を伴う。悪心、嘔吐、光過敏はない。誘発因子もない。
第2の痛みは、日に3-5回、各1秒生じる。左のみで、左下顎、上下顎の歯、前頭部、側頭部に生じる。突然の、鋭い、穿刺性の、電撃様の激痛。この痛みは、歯磨き、咀嚼、冷たい飲み物、顔に触れることで誘発される。
2つの痛みは別々に生じるが、稀に同時に起こることもある。
<治療>
第1の痛みは、インドメタシン200mg/dayで完全に消失。
しかし、消化管出血が生じたためインドメタシンは中止せざるを得なくなり、ヴェラパミール480mg/dayを使用(効果は不十分)。
第2の痛みは、カルバマゼピン300mgを1日2回で消失。しかし、薬疹が出たため中止。ヴェラパミールは三叉神経痛様のこの痛みには無効。ヴェラパミール+Topiramate 300mg/dayで疼痛強度は軽減しているが、効果は不十分である。
考察
症例1では、最初はインドメタシンで両方の痛みが消失したことから、2つの痛みは関連していると考えられる。
Frommは「三叉神経痛は末梢に原因causeがあり、中枢に病因(pathogenesis病理学的原因)がある」と言っているが、多分PH-ticも同じであろう。PH-ticでは、「正常なら三叉神経核中で求心性の活動をコントロールする抑制系のメカニズムに変化が生じる」などの中枢性の異常が生じ、また視床下部にも機能障害が生じるのだろう。