持続性片側頭痛

痛みは片側性で持続性だが、時々群発頭痛などのような激痛になることがある。
①continuous background painと、②それに重なる時折の増悪(superimposed variable exacerbation)の2種類の痛みがある①だけに注意を払っていると、「非定型顔面痛」と間違えることがあるので注意。この頭痛では自律神経症状は目立たないので患者が自覚していないことが多い。)「目の中の異物感」を訴える患者が30-50%いるので、鑑別の手がかりとしては重要なキーワード。

ICHD-3β 3.4 Hemicrania Continua(持続性片側頭痛)
<診断基準>
 A.B〜D を満たす一側性の頭痛がある

B.3 ヵ月を超えて存在し,中等度〜重度の強さの増悪を伴う

C.以下の1 項目以上を認める

  1. 頭痛と同側に少なくとも以下の症状あるいは徴候の1 項目を伴う

     a) 結膜充血または流涙(あるいはその両方)

     b) 鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)

     c) 眼瞼浮腫

     d) 前額部および顔面の発汗

     e) 前額部および顔面の紅潮

     f) 耳閉感

     g) 縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)

  1. 落ち着きのない,あるいは興奮した様子,あるいは動作による痛みの増悪を認める

D.治療量のインドメタシンで完全寛解する(注1)

E.ほかに最適なICHD-3 の診断がない

1.成人では経口インドメタシンは最低用量150mg/日を初期投与として使用し,必要があれば225 mg/日を上限に増量する。経静脈投与の用量は100〜200 mg である。維持用量はこれより低用量で十分な場合が多い。

<文献要約>

1)Hemicrania continua: clinical review, diagnosis and management.
Prakash S, Patel P. J Pain Res. 2017 Jun 29;10:1493-1509

(「hemicrania continua」の用語は1984年にSjaastadとSpieringsによって命名)

2017年:最初の報告から35年が過ぎた。HCには様々な臨床パターンがあるので、この20年間診断基準は書き換えられ続けており、分類でさえ議論がある。171文献1002ケースの報告がある、これを分析する。

疫学

 一般人口中の有病率は不明。

 全頭痛外来の1.7%.

 Second most common TACs

 Side-locked headachesとしては、群発頭痛・Side-locked片頭痛・頸原性頭痛についで4番目に多い。

 Rssiの報告では、HCと診断された患者の80%が神経内科を、28%が頭痛センターを受診していたが見逃されていた。

好発年齢

 40歳代。しかし5-76歳の幅で報告があるので、いずれの年齢にも生じうると考えられる。

 

男女比

以前は5:1で圧倒的に女性に多いとされていたが、最近では2.8:1、また1.8:1となっている。女性の比率は高い。

臨床的特徴

左右  strictly unilateral. 左右がスイッチするケースもあるし、両側性のものも数症例は存在する。

疼痛部位=三叉神経1枝:眼窩・眼窩上部・側頭部、またはそれらのコンビネーション。(ICHD-3βの診断基準には部位が入っていないので入れるべき)

痛みの特徴とパターン

痛みは①持続性片側性の頭痛(background pain)と②それに重なって生じるexacerbationの2種類が存在する

痛みの性状と強度

1,background pain

   Dull and pressureでTTHのようにみえる。

   Throbbing, stabbingという患者もいる

   強度は軽度~中等度(VAS 3.3-5.2)

   体動による悪化はない。82%でdisabling(日常生活に支障)なし

2,exacerbation

   VASで7以上の激痛

   悪化時にはCHやPHのような激痛になり、49%が過去に経験した痛みの中で最悪という。

持続時間と頻度(個人差が大きく意味がない)

   非常に個人差があり、どのような時に悪化するかというパターンはない。

   悪化の平均持続時間は32分から31時間と差があり、数秒~2週間という幅がある。

   増悪は一日に20回という報告もあるが、4か月に1回と言うこともある。

   夜間に悪化するというのはcommonで53%。(しかしcircadianリズムとの関係に関する報告もない)

Ipsilateral cranial autonomic symptoms(CAS)

CASは10種類

CHやPHでは90%以上にCASが認められるが、HCでは433例中少なくとも1つのCASを持つのは74%。

HCのCASはsubtleなので患者が気づいていないことが多い(62人中9人は最初は「ない」と言っていたという報告がある。)「ない」と判断する前に他覚的な評価が必要。

もっともcommonなのは「流涙」で36-77%。

結膜充血。眼瞼下垂、鼻閉、流水。

ICHD-3βでは「耳閉感」が加えられたが、これはCittadiniの14症例中の19%にしか見られていない。

それよりも「a feelings of foreign body sensation in the eye(目の中に何かがある・砂・石)」の方が多い(32-43%)。他のTACsではこういう言い方はしないのでむしろこちらを診断基準に加えるべきと思われる。

落ち着きのなさ、興奮  52%に見られる

片頭痛様の特徴

増悪時には32-71%(meanで56%)の患者が片頭痛の診断基準を満たしてしまう。

悪化のトリガー

51%がストレス、38%がアルコールと不規則な睡眠

分類とvariants

 

二次性HC

二次性の39%は外傷後、次が開頭術後。その他頭蓋内腫瘍、プロラクチノーマなど

外傷後HCは一般人口中にもcommonでインドメタシンが著効

併存する頭痛

一次性頭痛にHCが併存することはよくある。特に群発頭痛

診断の遅れ

平均で95±75か月(8±7.2年)

患者は悪化した時の痛みのみを訴え、持続性のbackground painについて自発的に言うことがないため。

診断が遅れることにより生じる事態

36%が不要な外科処置を受けている。抜歯と上顎洞のopeが多い。

鑑別診断

痛みが2種類あると気がつけば診断は容易。

持続性の痛みを無視しがち。

CH/PHとの鑑別は①一日中続く痛みがある、②激痛化したときの発作時間がCH/PHでは決まっている、③HCでは片頭痛様の症状を訴えることが多い。

HCの平均発症年齢は40歳代(片頭痛は20^30歳代)

HCの32%が悪化時には群発頭痛の診断基準を満たす。

診断のアプローチ 

TACsの3つのA (a mnemonic “3 As for unilateral headache”)

  1. anterior located ②autonomic features ③agitation

↓TACsを疑ったら真っ先にするのは「持続性のbackground pain」がないかという質問。患者がよくわからないと言ったら「Do you have headache right now?」と聞く。もし「Yes」なら持続性のbackground painがある可能性がある。

管理

インドメタシンは平均で94-176mg使用する(幅は25-500mg/day)

24時間以内に完全に痛みが消失するのはわずか10%

1週間で消失するのは43%

完全消失には4週間かかる

すべての慢性疼痛は脳のペインマトリックスに形態学的変化を生じさせるので、病悩期間が長いHCの場合は完全寛解には時間がかかると考えるべき。

インドメタシンは時間と共に減量が可能となることが多い

中止すると痛みは再燃するというのはHCの診断にきわめて重要。インドメタシンテストなどより診断価値がある情報である。

インドメタシンの副作用は20-75%で生じる。

完全寛解が報告されているインドメタシン以外の薬

Drugs other than indomethacin producing complete response in patients with HC

Drugs

Number of patients

Effective dose (mg/day)

トピラマート

16

100–200

Cox2阻害薬

15

 

 Rofecoxib11,37,39,103,104,105

8

50–100

 Celecoxib103,106

7

200–600

コルチコステロイド (MPS)14,29,107

14

Oral–injectable

イブプロフェン

9

600–2400

ASA5,8

8

1400–2800

ガバペンチン

7

900–3600

メラトニン

6

6–9

Piroxicam derivative23,28,114

6

20–60

アミトリプチリン

6

25–75

Acemethacin115

3

90

ベラパミル

2

120

メチセルジャイド

1

*

Nimesulide11

1

*

 

 

 


2)Boes CJ, Swanson JW.
Paroxysmal hemicrania, SUNCT, and hemicrania continua.
Semin Neurol. 2006 Apr;26(2):260-70.

歴史
臨床的特徴とインドメタシンに反応することは、MedinaとDiamondが報告し、「hemicrania continua」の用語は1984年にSjaastadとSpieringsによって広く用いられるようになった。HISは2004年に診断基準が示された。

疫学
以前は稀と考えられていたが、現在では、一例報告では論文が書けない程度にはcommonと考えられている。男女比は1:2と女性に多い。平均発症年齢は28歳(5-67歳の幅)。

臨床的特徴
軽度から中等度の片側性の頭痛が持続性しており、時々その疼痛がより悪化するのが特徴である。疼痛部位は、前頭部、側頭部、眼窩部、後頭部が一般的だが、頭頸部のどの場所にも起こりうる。疼痛が悪化した場合には、患側に自律神経症状が生じることが多い。自律神経症状は、発作性片側頭痛や群発頭痛ほど著明ではない。

ベースラインの持続性疼痛は、鈍痛で圧迫されるようなと表現される。光過敏、音過敏、悪心、嘔吐、自律神経症状は伴わない。疼痛が悪化する場合には、75%が「ベースラインの持続性疼痛に強い痛みが重なる」。増悪時の痛みは、「拍動性」または「刺すような」。増悪時には、光過敏(59%)、音過敏(59%)、悪心((53%)、嘔吐(24%)で、自律神経症状は2/3の症例に認められる。最も多いのは、結膜充血に続く流涙である。1/3に夜間の発作が認められる。

治療
インドメタシンで完全に疼痛消失に至る。処方は、paroxysmal hemicraniaと同様である。インドメタシンで寛解が得られることがあるので、PHと同様、平均発作期間より2週間多く服用し、その後減量を試みる。