Psychogenic facial pain要点
Feinmann(MD, MSc, MRCPsych:academic department of psychological medicine),
Harris(MD, FDS:口腔・顎顔面外科)
1) Feinmann C, Harris M, Cawley R.
Psychogenic facial pain: presentation and treatment.
Br Med J (Clin Res Ed). 1984 Feb 11;288(6415):436-8.
* Psychogenic facial painは、歯科の知識のない医師、精神科のトレーニングを受けていない歯科医師によって扱われている
2) Feinmann C, Harris M.
Psychogenic facial pain. Part 1: The clinical presentation.
Br Dent J. 1984 Mar 10;156(5):165-8.
―Psychogenic facial painは、Facial arthromyalgia(TMD),非定型顔面痛、非定型歯痛oral dysesthesiaなどという言葉で分類されている。医師や歯科医師は、Psychogenic facial painの患者を、その臨床症状にちかい器質的疾患として診断する傾向にある。
―以下、PFPについて:(TMDに関する説明。)原因と治療法に関し、様々な議論があることを指摘。TCAが効くという報告を引用。「非定型顔面痛」の場合は、もっと曖昧。部位は顔面骨や歯槽骨。亜型として「非定型歯痛」がある。「oral dysesthesia」は、舌や口唇、歯肉、無歯顎部の灼熱性疼痛や感覚の変化。これらは単独でも複合しても起こりうる。ちょうどよい咬み合わせが見つからないと、神経症的、精神病的な執拗さで訴える患者もおり、「phantom bite syndrome」と呼称されている。
―患者は、疼痛をコントロールしようとして、非常に多くの医師を転々とする。
―神経ブロックを含む外科治療は、これらの症状を悪化させるだけという報告もある(データあり)
―Psychogenic facial pain患者の80%以上が、腰痛・頭痛・過敏性腸炎などの身体の他の部位に痛みを訴える(普通の人の10倍)。すなわち、このような患者にとって、顔面痛はストレスに対する全身反応の一つでしかない。
―研究目的
1, 精神疾患の存在する頻度
2, Psychogenic facial painと診断された患者中、臨床症状がTMDと非定型顔面痛の患者を比較
3, TCA(dothiepin)の効果(スプリントありとなし=No.2のpaperで報告)
―先行して歯科処置が行われている例が多い
―方法:TMD(20年前の診断ということを考慮)か非定型顔面痛で紹介されてきた患者
―結果:150名中、93名(女性73名、78%)が9週間のtrialを完了、84名が1年後のfollow upを受ける
・痛みの性状・持続時間:90%がdull-aching、30-40%の患者に、時々sharpな激痛あり。約90%が毎日痛む。44-56%が数時間持続、一日中持続するのは、32-49%
・精神疾患、半数がなし、半数がdepressive neurosis(抑うつ神経症=死語)、約80%がきっかけとなった、adverse life eventあり
・臨床症状がTMDと非定型顔面痛の患者を比較=差はない、Psychogenic facial painでひとくくりできる
3) Feinmann C, Harris M.
Psychogenic facial pain. Part 2: Management and prognosis.
Br Dent J. 1984 Mar 24;156(6):205-8.
―原則的には、TCA(dothiepin)は25mgから開始し、3日ごとに25mgづつ増量。Dosageは途中で、adjustしながら少なくとも150mgまで使用。患者は「150mgを3週間服用しなければ、効果が出てこない」とあらかじめ説明されている。(結果的にはこれがプラセボの結果に影響を与えてしまった)
―9週間のtrialで73%が疼痛消失する(プラセボでは(でも)、44%)
―12か月後、その81%がpain freeのまま。残り19%はpain再燃
―プラセボ群のほうが、実薬群よりも多くTCAの副作用を訴える
―スプリントは効果無し(コンプライアンスが悪いせいかもしれないが、と考察)
―再燃を予防するには、TCAを1年間維持しなければならない
―歯科医は精神療法のトレーニングを受けていないが、卒前卒後教育にカウンセリングテクニックを盛り込むことは、重要であると思われる。
Summary
1) カウンセリング:プラセボでもある程度の結果が出ることから、説明や保証が疼痛や精神症状を軽減させるといえる。詳細な問診によりPsychogenic facial painと診断した場合には、認知療法が成功することもある。しかし、疼痛消失後も、頻繁な面接が必要。
2) この研究では、dothiepinを25-225mg使用した。TCAは歯科医が処方できる薬にしなければならない。
3) 9週間経過しても効果がないときには。薬の量が不適切であるか、代替療法が必要である。理由は不明だが、TCAに少量の抗精神病薬を加えることで改善が得られることもある。
4) 最後に:ほとんどの症例はトレーニングを受けた歯科医が管理できる。しかしながら、10-20%は精神科医の診断や治療サポートが必要なケースである。
備考:TCAの力価
ノリトレン以外のTCAは全て等価。アミトリプチリン100mg=dothiepin100mg。
ノリトレンは、1/2で計算。アミトリプチリン100mg=ノリトレン50mg。