非定型歯痛(過去の文献)
AO文献要約 *Harris論文、Vickers論文を更新(05/31)
1978 Rees RT, Harris M., Atypical Odontalgia; Br J Oral Surg. 1978 Mar;16(3):212-8.
1978 Marbach J: Phantom tooth pain J Endodon 1978; 4: 362-72
1979 Rees RT, Harris M., Atypical Odontalgia; Br J Oral Surg. 1979 Mar;16(3):212-8.
1980 Brooke RI., Atypical odontalgia. A report of twenty-two cases.Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 1980 Mar;49(3):196-9.
1984 Louis Reik, Atypical Odontalgia : a Localized Form of Atypical Facial Pain(1984), Jr. Headache. 1984 Jul;24(2):222-4. No abstract available.
1991 Bates RE Jr, Stewart CM., Atypical Odontalgia: Phantom tooth pain:
Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 1991 Oct;72(4):479-83.
1992 Schnurr RF, Brooke RI ., Atypical odontalgia. Update and comment on long-term
follow-up.:Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 1992 Apr;73(4):445-8.
1992 Graff-Radford SB, Solberg WK., Atypical Odontalgia:
J Craniomandib Disord. 1992 Fall;6(4):260-5.
1997
Lilly JP, Law AS., Atypical odontalgia misdiagnosed as odontogenic pain: a case report and discussion of treatment.
:J Endod. 1997 May;23(5):337-9.
1998 Vickers ER, Cousins MJ, Walker S, Chisholm K., Analysis of 50 patients with atypical odontalgia. A preliminary report on pharmacological procedures for diagnosis and treatment.: Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 1998 Jan;85(1):24-32.
2003 Atypical Odontalgia :Review:Headache
Atypical Odontalgia(44症例の報告) (1978)
Rees RT, Harris M., Atypical Odontalgia; Br J Oral Surg. 1978 Mar;16(3):212-8.
特徴:歯に関する痛み。通常片顎から始まるが、しばしば正中を超えて反対側の顎に拡大する。全顎に痛みを訴えることもよくある。痛みは持続性で拍動性。
痛みをコントロールしようとして根治、抜歯が行われる。これで疼痛が緩和することもあるが一時的であり、数日または数週間以内により強度を増して再燃する。患者は抜歯した部分や、他の歯牙に痛みを訴え始め、最終的には全顎を抜歯したが痛みが止まらないという結果になる。したがって、さらに侵襲的な外科処置が行われる。
自然に痛みが消失することもあるが、永久的に消失する例は少なく、多くは一時的である。
患者の多くは、家族や社会環境とのストレスの既往がある。言いたがらないが慎重に問診すると個人の問題や、多くの責任を抱えていることを認める。
痛みの悪化や改善は、心理的状態や社会環境に左右されていることが多い。(癌の夫を長年看病している妻の歯痛についての例)
患歯には強い打診痛が認められることもあるが、こういう患者の場合、疼痛がない歯も打診を訴えることが多い。
時として、歯肉や口腔粘膜に著明な充血を認めることもある。
診断的麻酔の効果は様々である。
患者の平均年齢は43歳、82%が女性。
疼痛は20年持続することもある。
30%が片頭痛持ち、66%がうつと診断されている。ブラキシズムの既往を持つものは20名45%。
治療しなかった場合、ほとんど全ての症例で疼痛は増悪する傾向にある。
臨床管理と病態生理:
詳細な病歴の聴取(感情的問題も含めて)
Dental migraine(うつやストレスに関連して生じる、カテコールアミンの増加が関与する歯の周囲の血管の充血に起因する症状ではないか)
治療:
三環系抗うつ薬(通常dothiepine)
最初の2週間で25-75mgまで増量。
必要なら250mgまで使用する(50mgを2回+150mgを就寝前)。
多くの患者は1ヶ月以内に改善を認めるが、数ヵ月かかることもある。
TCAかMAOで75%は疼痛改善(TCAは疼痛を66%、MAOが9%)。
7%は自然寛解している。
薬物療法による治療が奏功しない者=9%
ドロップアウト9%(治療拒否、来院せず)
Discussion:
Lasscelles(1966)が行った顔面痛とうつの関連のRCTの研究では、phenelzine(Nardil)がプラセボに比べて有意に顔面痛とうつを改善したことが報告されている。
彼は区別していなかったが、顔面痛の患者の中の1/3は歯に関する訴えで、歯科治療を受けていた。
AOというのは、Atypical facial neuralgia (= psychogenic facial
pain)の限局したタイプなのではないか。
カテコールアミン仮説(うつはカテコールアミン、特にノルアドレナリンの欠乏による)
三環系抗うつ薬が奏功するのは、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害するから。
Forty-four cases of odontalgia are described which are considered to be a painful migraine-like disturbance of the blood vessels of the dental pulp and periodontal membrane. The condition appears to be a manifestation of depression and other personality disorders and responds well to antidepressant drug therapy (75 per cent of the patients). The recognition and proper management of this atypical ondontalgia is of crucial importance in preventing unnecessary surgery.
Phantom tooth pain (1978)
Marbach J: Phantom tooth pain J Endodon 1978; 4: 362-72
25例の報告
88%は女性
病悩期間は1年未満から14年まで
56%が歯科治療後に発症している
治療は、麻酔薬やステロイドのTPへの注射、頭頸部の筋のエクササイズ、抗炎症薬、精神的サポート
これらの治療で13名52%が改善
Atypical Odontalgia(44症例の報告) (1979)
Rees RT, Harris M., Atypical Odontalgia; Br J Oral Surg. 1979 Mar;16(3):212-8.
Atypical Odontalgiaは、Atypical facial neuralgiaの一つだと思われる。
患者の平均年齢は43歳、82%が女性。
疼痛は20年持続することもある。
30%が片頭痛持ち、66%がうつと診断されている。ブラキシズムの既往を持つものは20名45%。
(疼痛が拍動性であることを考えると、血管性頭痛の症状ではないか、と考察)
治療しなかった場合、ほとんど全ての症例で疼痛は増悪する傾向にある。
TCAは疼痛を66%controlする。多くは一ヶ月以内に疼痛緩和し始める(最大250mg/dayまで使用。)
7%は自然寛解している。
Atypical Odontalgia(22症例の報告) (1980)
Atypical odontalgia. A report of twenty-two cases.
Brooke RI. Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 1980 Mar;49(3):196-9.
後に(1992年に)120例をまとめて報告
症例1
患者:32歳、女性(看護師)
病悩期間:15年
既往歴 現症の疼痛緩和を目的に、非常に多数の手術の既往あり
現病歴・現症
―17歳時 喉と耳の感染症から回復した後、右顔面にepisodicな電撃様鋭痛が発現するようになった。疼痛発作は日に何度も生じ、咀嚼時や風が当たったときに増悪する。
―病院を受診し、ステロイド治療を開始したところ、5-6日で改善。疼痛は1年間は消失していた。
―1年後、両側の全上顎歯牙に発現し、間歇的な穿刺痛が他の離れた場所の歯にも発現するようになった
―疼痛は徐々に増悪し、痛みの中心は左上1と思われた
―疼痛はしばしばすべての歯と歯肉に生じた。
―右顎に灼熱性疼痛が生じることもある
―痛みは持続性のもの+時々の飛び上がるような発作性疼痛のものの2種類
検査所見:脳神経・口腔内には異常なし(右上6,左上7には打診痛あり)
治療
―様々な鎮痛薬やテグレトール(1600mg/day)にも反応しない
―これ以上の外科処置を受けないようアドバイスし精神科医へ紹介→抑うつ神経症と診断され、Etrafon-Dを処方されたところ、1ヶ月後には疼痛は「共存できるくらい」となった。
症例2
患者:45歳、女性、1978年初診
病悩期間:18ヶ月
現病歴・現症
―ブリッジ装着後より、口腔内の違和感が発現、咬合調整を繰りかえす
―3-4ヶ月後、ブリッジのあたりに疼痛が発現し、徐々に上顎全歯と下顎の歯に拡大した
―多くの歯科医を受診し、咬合調整やスプリント作成を繰り返したが効果なし
―6ヶ月後、左上6にabscess形成。根治で疼痛は消失したが、2-3日後には疼痛が再燃し、患者の要請によって左上5,左下6も開放。左顔面腫脹。入院して抗菌薬で加療。
―退院1週間後、別の医師を受診し、急性上顎洞炎と診断され、抗菌薬を処方される。疼痛はやや改善するも、持続している。
治療
初診時の検査では、異常は認められなかった。
患者は疼痛にとらわれており、ヒステリックにこれを表現した。
神経内科医でも異常なしと診断されたが、根治の継続を希望した。
結果
病悩期間は、4ヶ月~19年(平均5.6年)
年齢は、32-74歳
初発は25-35歳の間がもっとも多い
患者は全員女性
23%が片頭痛、41%がうつの既往を持つ
全員が、濃厚な歯科治療を受けているが、症状を裏付ける他覚的な所見は乏しい
患者が「何とかしてほしい」と強く希望するために、処置がなされてしまう。
しかし、治療を行えば行うほど状態は悪化していく傾向にある。
はじめは修復、そして根治、歯根端切除、抜歯という経過をたどる。
「Each stage being a prelude to the next」である。
Discussion
Harrisが報告したように、idiopathic periodontalgiaと呼ばれるconditionがある。患者は、歯に耐え難い疼痛を訴える。疼痛は片側性で限局している場合もあるが、両側性で広範囲な場合のほうが多い。
歯科治療を繰り返す。Emotionalな問題をもっていたり、片頭痛の既往がある。
1979年、HarrisはこれをAtypical Odontalgiaと命名。Atypical facial neuralgiaの一つとみなした。
治療
これ以上の外科処置を避けること、保証、TCAで行う。
明らかな心理的要因を持つ患者、あるいは薬物療法に反応しない患者は精神科医へ依頼する。
鑑別診断
上顎洞炎
筋筋膜痛
発作性神経痛
片頭痛や側頭動脈炎などの血管性頭痛
結果
50%は抗うつ薬またはtranquilizerで疼痛消失。
Harrisたちは75%で疼痛消失という好成績をあげているが、おそらくこれは彼らがもっと長い期間抗うつ薬を処方したからだと思われる。(疼痛消失までに8週間かかるとしている)
Discussion
Harrisたちは、AOは局所の疾患ではなく、うつや血管性の障害などの全身疾患の症状だと主張している。またAOはAtypical facial neuralgiaの一つと考えて治療するのが適切であるとしており、われわれもこれに同意する。
Atypical Odontalgia : a Localized Form of Atypical Facial Pain(1984)
Louis Reik, Jr. Headache. 1984 Jul;24(2):222-4. No abstract available.
症例1
患者:56歳 女性
病悩期間:4年
現症・現病歴
52歳時に、右下67に持続性灼熱性・拍動性疼痛が発現。異常は認められなかったが、根治を行う。改善が得られないため、医科的・神経内科的評価を行うが、やはり異常なし。スプリントでTMD治療を行うが、ほんの少し改善があったのみ。疼痛は右上4に拡大し、根治するが、疼痛は依然としてこれら3本の歯に持続する。医科でうつや片頭痛はないと診断される。
治療:トリプタノール25mg/dayで疼痛消失。
症例2
患者:54歳 女性
病悩期間:11年
主訴:右下顎の持続性鈍痛・拍動性疼痛
現症・現病歴
43歳時疼痛が発現。抑うつ状態であったためアミトリプチリンとthioridazineを処方され、うつも疼痛も消失。1年後、薬を中止すると疼痛は再燃。
X-Pでは異常が認められなかったが、歯科治療が行われた。
右下全歯に根治が行われ、その後すべて抜歯されたにもかかわらず、疼痛は持続。
歯科・神経内科・脳外科での評価で異常は認められなかった。
残りの全歯も抜歯し無歯顎となるが、疼痛は持続。
29歳時、post-partum depressionの治療のため、電気痙攣療法を行う。母親と2人の兄もうつ。家族に片頭痛の既往なし。
治療
アミトリプチリン200mgとfulphenazine4mgで疼痛消失。
症例3
患者:38歳 女性
病悩期間:3年
主訴:
現症・現病歴
当初疼痛の中心は右下56であった。
疼痛はepisodicであり4-5日のintervalがあり、一度の発作は12-24時間持続した。
X-Pで異常は認められなかったが、根治が行われ、最終的には抜歯となった。
疼痛は徐々に持続性となり、拍動性で右側頭部から顎関節部、首、肩に放散する痛みがこれに重なるようになった。疼痛は常に月経前に悪化した。患者は抑うつ状態になり、睡眠障害を伴った。スプリントは症状をわずかに改善した、ジアゼパム、atenol、エルゴタミン、イブプロフェン、zomepiracは効果なし。アミトリプチリンとノルトリプチリンは副作用で耐えられず。いとこに片頭痛持ちがいる。頭部のあちこちに圧痛あり。
治療
トラゾドン300mgでうつは解消したが、疼痛は持続している。Methysergide4mgを加えたところ、疼痛は消失。
結果
1年間に8名のAOを治療した。(7名は女性)
年齢:37-56歳
全員が軽度から中等度の持続性鈍痛、gripping painを訴えた。
病悩期間:2-18年(平均4年)
全員が歯科治療を受けている。(2名が抜歯、もう2名は全歯を抜歯されている。)
1名は鼻中隔修正のopeを、1名は上顎洞のopeを受けている。
治療
全員がアミトリプチリンかトラゾドンを服用。3名は疼痛が完全消失。
Discussion
Harrisたちの報告とほぼ同じだが、われわれの症例には片頭痛の患者はいなかったし、抗うつ薬の効果もそれほど著効ではなかった。(サンプルサイズが小さいからだろう。)
Atypical Odontalgiaは、Atypical facial neuralgiaの一つ(理由は以下)。または、血管性頭痛の症状。
1, 持続性鈍痛で、神経炎のようではない
2, 数秒ではなく、持続時間が長い
3, 顔面、頸部、頭蓋に拡大する
4, トリガーやトリガーゾーンが存在しない
5, 女性に多い
血管性頭痛の症状・・?
何年も持続していることや、エルゴットが効かないことから否定的。
Atypical Odontalgia- A Nondental toothache(1984)
Pertes RA, Bailey DR, Milone AS. J N J Dent Assoc. 1995 Winter;66(1):29-31, 33.
症例1
患者:52歳 女性
病悩期間:4年
主訴:右上顎臼歯部の持続性鈍痛・時折の激しい鋭痛
現症・現病歴
4年前、歯周外科手術直後から、右上5に疼痛が発現。根治を行うが疼痛に改善なく、4の根治も行う。5の歯根端切除術→抜歯となる。上顎洞には異常がなく、NSAIDs、コデイン、アセトアミノフェン、ベンゾジアゼピン、上下にスプリントは無効。疼痛は「常にそこにある」状態で、徐々に増悪していった。疼痛は2種類で、鈍痛(灼熱性疼痛のこともある)と、時々生じる「歯髄が露出したような」鋭痛である。欠損した5のために暫間 ブリッジが装着された。3%カルボカインによる診断的麻酔は疼痛を改善させない。AOと診断。
治療
アミトリプチリン30mgで疼痛は著明に改善した。神経内科医のアドバイスで25mgに減量すると疼痛は再び増悪。アミトリプチリン40mgで完全に疼痛が消失することが判明した。
現在は35mgで維持している。
症例2
患者:28歳 男性
病悩期間:2年
主訴:複数の歯、顎骨、顎関節の疼痛
現症・現病歴
疼痛は2年前に右上67に発現、根治→抜歯となる。疼痛は一時消失したが、右下67に発現、根治→抜歯となる。疼痛は一時緩和するが、今度は左上78と左下8に発現(最終的に抜歯された)。
受診時、患者は左上4に持続性疼痛があり、左上の抜歯済みの部位にもときどき疼痛が発現すると話していた。疼痛は仕事のストレスとパラレルに増減する。
さまざまな薬剤を試したが無効、診断的麻酔は20%ほど疼痛を減らすのみ。
治療
AOについての説明を行い、アミトリプチリン75mg+fluophenazine3mg(分3)で、歯の疼痛は著明に改善。Fluophenazineの長期投与による副作用を懸念し、他の治療に変更することにした。SGB(効いたが患者が拒否)。その後患者とのコンタクトをロス。
1年後に連絡がついたら、疼痛は全く消失していた=離婚したらストレスがなくなり(疼痛も消失した)。
病因
今まで血管性、心因性の説があるが、現在では求心路遮断性疼痛ではないかという説もある。口腔顔面領域への外傷、歯周外科、根治、抜歯、インプラントなどの他に、一見無害と思われるクラウン形成などの治療も求心路遮断の原因になっていることが考えられる。
しかし、歯の治療後、数ヵ月から数年たって起こるものもあるので関連づけにくい。
(求心路遮断にしては、治療と発症の間に時間がありすぎる)
SGBにもよく反応するため、交感神経が関与していると思われる。
管理(治療)
―患者に疼痛の教育をすることが重要。
―通常の鎮痛薬、麻薬、鎮静剤、抗菌薬、歯科治療は無効。
―TCAが第一選択(Graff-Radfordらの研究では、25名の患者に平均80mg/dayを使用し、75%で疼痛が緩和した)
Atypical Odontalgia: Phantom tooth pain (1991)
Bates RE Jr, Stewart CM. Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 1991 Oct;72(4):479-83.
30症例の報告
症例1
患者:61歳 女性
病悩期間:2年
主訴:左上下顎半側の歯の灼熱性・拍動性疼痛
現症・現病歴
疼痛は、2年前に左下顎に6本のクラウンと1つのブリッジを装着した直後に始まった。
根治→歯根端切除術→抜歯となった。歯科治療はすべて無効。カルバマゼピンとtemazepamで治療するが無効。疼痛は持続性で、しばしば非常に増悪した。疼痛は非常に多忙なときには感じない。睡眠は不良でしばしば夜中に覚醒する。そうすると疼痛を感じるが、疼痛で覚醒することはない。疼痛は発症1年後に左上2の根治、歯根端切除後に左上のquadrantに拡大した。X-P、口腔内には異常を認めず。
治療
トリプタノール50mg+fluoperazine3mg(分3)で、3週間後には灼熱性疼痛は消失、拍動性疼痛も40%改善。3ヶ月後、薬剤の減量を試みるが、減量すると疼痛はもとのレベルにまでUPするため、そのままの量で9ヶ月間維持。9ヶ月後薬剤を中止すると、7日で疼痛はもとのレベルにまでUP, トリプタノール25mg+fluoperazine2mg(分4)に戻したところ、2週間で灼熱性疼痛は消失、拍動性疼痛も緩和。このまま12ヶ月維持、薬剤を中止すると4ヶ月で疼痛再燃。同量の薬剤を服用すると、疼痛は消失。現在はこの量で疼痛はほぼ消失している。3年間の治療の結果、このままのdoseで維持することとなった。
症例2
患者:61歳 女性
病悩期間:1.5年
主訴:右上顎結節部分の引っ張られるような、腫れたような痛み。
現症・現病歴
18ヶ月前に右上7の歯痛のため、アマルガム充填を行ったところ疼痛が遷延し、根治→抜歯となったが、疼痛は持続したままであった。疼痛は上顎quadrant全体に拡大。疼痛は3-5日間増悪し、2-3日は改善するという状態を繰り返していた。
疼痛が発現する直前に再婚し、ストレスが増強した。夫は彼女の痛みを理解せず、「何とかしてもらえ」と主張した。
右咬筋と側頭筋に軽い圧痛を伴う筋筋膜痛があった。
治療
疼痛発現より6ヶ月後、患者は嫌々であったが、トリプタノール50mg+trifluoperazine3mg(分3)を服用したところ、2ヶ月後には疼痛は改善著明で、なにかストレスがかかったときにのみ感じられるだけとなった。
6ヶ月後、ほぼ症状消失したため、トリプタノール50mg+trifluoperazine 1mg(分2)に減量。
1年後(疼痛発現より18ヶ月後)、ほとんど疼痛はないが25ポンドも体重が増加したため、トリプタノールをトラゾドンに変更したところ(trifluoperazineは継続)、疼痛は完全に再燃した。やむを得ずもとの処方に戻し、現在まで3年9ヶ月維持。
症例3
患者:78歳 女性
病悩期間:1.5年
主訴:左上quadrantの掻痒感。
現症・現病歴
左上臼歯部に疼痛が発現したため、gold crownを除去し根治を行ったところ、疼痛と掻痒感は同側犬歯cuspidにまで拡大。臼歯は抜歯された。
神経内科を受診し、さまざまな鎮痛薬、propoxyphene, difunisal, カルバマゼピン、フルナゼパム、アミトリプチリンを試みるが無効。
患者は疼痛の中心は、抜歯された部分にあると述べた。疼痛は朝覚醒直後はないが、その後始まり終日持続する。
診断的麻酔では、麻酔された部分は感覚がないのに、相変わらず痛みが同じ部分に感じられる。20分後には疼痛は元のレベルに回復。
治療
担当医師と相談の上、イミプラミン75mgを処方したところ、2週間後、疼痛は完全に消失。
2ヶ月後、疼痛はないが体重が10ポンド増加したためイミプラミンを50mgに減量。
すると疼痛はすぐに元のレベルにまで増悪。75mgに戻したところ、疼痛は再び消失した。
1年後、疼痛と掻痒感が再発。イミプラミンを増量しても効果がないため、doxepin75mgに変更。これで数ヶ月間コントロールされている。
AOの特徴
過去の文献を総合すると、
患者の平均年齢:44.4歳(87.8%が女性)
病悩期間:4年
本研究では
患者の平均年齢:58.4歳(22-82歳)(90%が女性):平均年齢が他の報告に比して高いのは、場所がリタイアした高齢者が多いフロリダだからだろうと考察
病悩期間:4,4年(5ヶ月から25年)
診断的麻酔:30例中13例に施行。(6名46%はpositive responseで除外, 3名23%は疼痛に変化なし、4名31%partial relieve、ほとんどの患者が疼痛改善なしとしたHarrisのレポートとは食い違う。Graff-Radfordのプロトコールを踏襲する必要がある。)
治療
TCA (phenothiazineを加えることもある):FieldsもTCAは抗うつ効果とは別の、鎮痛効果をもつといっている。近年の説でも、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害して、疼痛抑制系に効果があるとされている。
患者教育(疼痛は本物である(気のせいではない)。外科処置や歯科治療は無効。
イミプラミンなら75mg(分3) 2-3週
アミトリプチリン75mg(就寝前)
Discussion
患者のプライマリケア医師と一緒に、TCAを処方する。
疼痛が消失した後は、多くの患者はTCAを中止できるが、維持療法が必要な患者もいる。
Harrisが強調するように、AOはうつと同様完解と増悪がサイクルでやってくるという特徴がある。
Atypical Odontalgia (1992)
Atypical odontalgia. Update and comment on long-term follow-up.
Schnurr RF, Brooke RI .Oral Surg Oral Med Oral Pathol. 1992 Apr;73(4):445-8.
120例の報告(追跡したのは28例)
初診時の年齢:42.6歳(SD=13.9)
13-80歳までの開きがあるが、ほとんどは23-60歳の間
97名(80,8%)は女性
病悩期間:1ヶ月~20年(平均3.1年)
疼痛部位
歯や顎に限局しているもの112名(93.3%)
27名(22.5%)は口腔内の複数の部位に同時に疼痛がある
17名(14.2%)は顔面(頬部、眼窩や耳の周囲)
9名(7.5%)は疼痛部位が口腔内で移動する
5名(4.2%)は舌痛
心理的なストレスがあるものはわずか21名(17.5%)
片頭痛の既往があるもの19名(15.8%)
1/3は疼痛の発症に特定できるeventがあるとしている(多くは補綴か抜歯)
1名のみが疼痛と現在進行形のストレスに関連があるとした。
治療
施設の性質上、診断のみを行い治療は患者の担当の医師に手紙で依頼した。
治療はTCAを少なくとも12週間。これでダメならMAOを使う。
Follow-UPの結果
TCAでの治療では、60-70%が疼痛緩和が得られた。
5年以上経過した症例53例中、コンタクトできたのは28名であった。
28名中19名は、今も疼痛があった。うち7名は持続性疼痛。12名は発作性の軽度な疼痛があったが、このうち少なくとも5名は抗うつ薬を再開すると疼痛は収まる。
Discussion
ほとんどの患者では疼痛はある特定の歯に限局している。
しかし、口腔内の多数の部位に疼痛が発現することも珍しくはない。
舌の疼痛は、まれである。
契機として歯科治療が報告されてきたが、Marbachの56%に比べて当研究では30,8%と少ない。しかし、契機体験をもつものでは、そのほとんどが歯科治療である。
片頭痛やうつは、AOの病因としてはあまり重要ではないように思われる。
うつではないのに抗うつ薬を使用することに抵抗を示す医師(や患者)もいる。(「抗うつ薬を十分量、十分期間試用してくれなかったためにfollow-upの結果があまりよくないのだと思われる、=抗うつ薬を再開すると疼痛はまた収まるから」・・と考察している。)
パンフレットを作って、うつが原因で痛みが起こっているのではないということをきちんと説明すれば、服薬のコンプライアンスがあがる。
AOでは非可逆的処置が行われやすいが、処置が行われるたびに疼痛部位は拡大したり、別の部位に移ったりすることに注意し、非可逆的処置を避けさせるよう指導する必要がある。
Atypical Odontalgia (1992)
Graff-Radford SB, Solberg WK. J Craniomandib Disord. 1992 Fall;6(4):260-5.
TCAが第一選択
25名の患者に平均80mg/dayを使用し、75%で疼痛が緩和した。
Section of Orofacial Pain and Clinical Research Center, UCLA School of Dentistry.
Atypical odontalgia describes atypical facial pain in apparently normal teeth. Unfortunately, dentists usually consider this diagnosis only after the failure of invasive treatment. Atypical odontalgia patients are typified by women in their mid-40s who complain of persistent pain in one or more premolar or molar teeth. They associate pain with dental procedures or trauma to the region. While the cause of atypical odontalgia is uncertain, deafferentation pain appears to be a plausible mechanism. This article reviews relevant aspects of this perplexing pain problem. To help avert the untimely diagnosis of atypical odontalgia, identifying inclusion criteria are presented.
Atypical Odontalgia (症例報告)(1997)
Atypical odontalgia misdiagnosed as odontogenic pain: a case report and discussion of treatment.
Lilly JP, Law AS. J Endod. 1997 May;23(5):337-9.
症例1
患者:54歳 女性
病悩期間:1年
主訴:右上下前歯と左上全歯の疼痛
既往歴
Non-insulin dependent MD
Osteoarthritis
Ankylosing spondylitis
Asthema
ペニシリンアレルギー
現症・現病歴
疼痛は右下顎臼歯部、鈍痛+拍動性疼痛。右下5は最終的に抜歯。4-5日後、疼痛が上顎前歯部と左臼歯部に発現。上顎左右1、1と左上56に根治。1,1と6は抜歯。
受診時の主訴は、右上下前歯と左上全歯の持続性鈍痛であった。
口腔内、脳および脳幹に異常なし。
治療
アミトリプチリン25mgを1週間でいくらかの疼痛緩和が得られたため、50mgに増量したところ疼痛は完全に消失。1年後も疼痛の再発はない。
症例2
患者:71歳 女性
病悩期間:4年
主訴:右下3~遠心にかけての持続性鈍痛(時に灼熱性となる)
現症・現病歴
イブプロフェン600mg数週間は無効。
1年後疼痛は右上5(全くの健全歯)の歯槽部alveolus adjacent to tooth#4に拡大。
5には打診でいくらか違和感はあるが疼痛はなく、頬舌側の歯肉歯槽骨の圧痛もない。
―口腔外科に依頼し、右下顎神経のブロックを行ったが、多少効果があったのみで疼痛は消失しない。
―次に神経内科依頼、非定型三叉神経痛と診断され、多数の脳と脳幹の画像を撮影したが異常は認められなかった。カルバマゼピン、クロナゼパム、アミトリプチリン、perphenazine、temazepamは無効。
―脳外科で三叉神経の減圧術(ジャネッタ)を受けるが、疼痛は4-5週間消失した後に、右下3に再燃。
―歯科的な原因は認められなかったため、別の口腔外科でオトガイ孔のアルコールブロック、オトガイ神経切除を行った。疼痛は消失したが、2週間後、右下21に再燃。
―右下顎神経切除を行うが無効。
治療
当科受診時、右下顎神経支配部は完全に無感覚となっていたが、その他の異常は認められなかった。ノルトリプチリン10mgから開始し、50mgでやや疼痛に改善が認められた。この量で2年間維持している。現在疼痛は「軽度」になっている。
Discussion
―AOのメカニズムは不明であるが、心理的要因、血管性、求心路遮断の3つがあげられている。
―もっとも効果的な治療は、TCAによる薬物療法である。
―ノルトリプチリンもアミトリプチリンに劣らず効果的である(?)
―10mgから開始して100mgまで使用。
―irreversibleでunnecessary treatmentが行われる傾向にある。
Department of Hospital Dentistry, University of Iowa Hospitals and Clinics, Iowa City, USA.
Analysis of 50 patients with Atypical Odontalgia(1998)
Analysis of 50 patients with atypical odontalgia. A preliminary report on pharmacological procedures for diagnosis and treatment.
Vickers ER, Cousins MJ, Walker S, Chisholm K. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 1998 Jan;85(1):24-32.
Pain Management and Research Centre, University of Sydney, Royal North Shore Hospital, Australia.
50名の患者(37名は歯科医から紹介、13名は医師から)
平均年齢 51歳±15(21-82歳)
平均病悩期間 4,9±6.7年(3ヶ月から32年)
契機体験
歯科治療 37名
歯科的感染 3
歯の外傷 1
特発性 9
疼痛強度
強度 23名(5名はVASで10/10と答えている。自殺を考えたものも4-5人いる)
中等度 16
軽度 5
疼痛持続時間 <40名が持続性、10名が発作性>
1)EMLA(局所麻酔薬軟膏)を5分間貼付
2)15mg+5mgのフェントラミン(iv)
3)トピカルカプサイシン貼付(貼付前に3分間15%ベンゾカインでうがい。朝晩3分間ずつ、4週間貼付)
結果
*多くの患者は、確固たる治療法があるわけではないと話したにもかかわらず、診断がついたことで安心する。
*多くの論文が示唆するように、著者もAOがrareだとは全く思わない。それどころか、かなり頻度の高い疾患だと考えている。
*82%の患者は、疼痛が一歯から多数歯へ、また歯肉や粘膜へとび漫性に拡大していく。
(神経支配を無視して拡大する。末梢のsensitizationは、中枢のsensitizationを引き起こし、これが二次的なhyperalgesiaを生じることで説明できるのではないか。)
1) EMLA(著効?・・・平均で60%のpain reduction)
2) フェントラミン(効いたり効かなかったり=交感神経が絡んでいる症例とそうでないものがあるからではないか、と考察)
3) トピカルカプサイシン(37%で奏功せず)=しかも治療前にTMDの理学療法を行ってしまったcaseも少なくない。
11名が改善なし。19名は10-100%のpain reductionを報告。
長期(13ヶ月のtrialでは、特に改善なし)
(ほんの少しでも効果があれば、効果ありと判定している・・効果判定法に疑問)
Atypical
Odontalgia :Review (2003, Headache)
AOの総説
Marcello Melis, et al. 、Atypical Odontalgia: A Review of the Literature、Headache: 2003;43(10):1060より引用 ・要約
非定型歯痛は、歯科臨床に携わるものにとって、もっともfrustratingでchallengingな病態である。
1947年にMcElinとHortonによって報告された。
歯または抜歯した後の部位に生じる痛みで、臨床的にもX-Pでも全く異常は認められない。
歯痛または抜歯済みの部位に、器質的な異常が認められないにもかかわらず生じる疼痛。
commonな疾患で、歯内療法患者の3-6%に生じる。
子供を除いて、どの年齢にも生じ得るが、40代女性い多い。
大・小臼歯が好発部位。下顎より、上顎に多い。
1、診断基準
IHS分類では、12.8、非定型顔面痛に含まれている。
(11,12の診断基準に当てはまらない、顔面痛)で、歯や関連組織の疾患が除外されたものに対してくだす除外診断diagnosis of exclusionである。
「顔面、歯、歯肉の手術や傷害によって、始まった可能性がある疼痛で、明白な局所の原因が認められないもの」
AAOPは” 近年の神経因性疼痛の理解によって、AOのメカニズムにより適切な説明ができるとして、ごみ箱病名waste basket”になる可能性のある、12.8(非定型顔面痛)に含めることには同調していない。
*Graff-RadfordとSolbergは「特発性歯痛idiopathic toothache」という用語を用いて、IHS分類の11.6(11.6.5)に分類しようと提案している。(1992)
11.6 歯・顎・その関連諸組織に由来する頭痛・顔面痛
11.6.1 歯髄炎
11.6.2 歯周炎
11.6.3 dentinal
11.6.4 cemental
11.6.5 特発性歯痛idiopathic toothache
Graff-RadfordとSolbergの提案する特発性歯痛の診断基準
A. 歯またはその近傍の疼痛
B. 持続性またはほぼ持続性の疼痛
C. 4か月以上持続する疼痛
D. 局所の原因または関連痛であるという徴候はない
E. 神経ブロックに対する反応は、不明瞭
*1993年、Marbachの提唱するPhantom Tooth Pain (PTP)の診断基準
1、 疼痛は、通常末梢神経の傷害にともなって発現する。その傷害は、しばしば日常的な歯科・医科の外科処置や顔面への傷害によって生じる。
2、 歯への求心路遮断が同時に生じる必要はない。疼痛は、数日間、数週間、数ヶ月、数年にわたって遷延する。
3、 疼痛は、創傷が治癒した後も長く持続し、隣接する健康な部位にまで拡大する。
4、 PTPは末梢神経の切断や歯内療法を直前に行った患者に生じやすい?
5、 疼痛は持続性鈍痛で、深部の痛みであるが、時として自発性の鋭痛が生じることもある。
6、 睡眠は疼痛によって、障害されることはない
7、 末梢への刺激は、疼痛を一時的に悪化させるが、その影響が長時間持続することはない。傷害を受けた神経への打診は、tinel徴候を生じさせることがある。
8、 通常では侵害刺激にはなりえないような刺激も、疼痛に影響を与える。すなわち疼痛閾値が低下していることを示唆する(allodynia)
9、 外傷の原発部位では、他の部位に比較して疼痛がひどい。しかしながら、慢性の症例では、患者は疼痛部位を明示することが困難である。疼痛部位が隣接する部位に拡大することもその一因だと思われる。さらに、患歯を明示することも困難である。:疼痛ではない違和感でさえも、疼痛の部位や正確な知覚や疼痛部位の確定を混乱させる。
10、 X-Pや血液検査などの結果は、陰性である。
11、 早期に治療を開始しないと、疼痛は永続する。
12、 PTPは男性にも女性にも生じ得る
13、 PTPは成人には生じるが、子供に生じたという報告はない
14、 PTPを発症しやすい素因のある人格の有無に関しては、現時点では不明。
*著者らは、AOをIHS12.1に含めることを提唱し、Pertesらの診断基準を推奨している
(12.1 脳神経に由来する持続性疼痛 (発作性神経痛と対照的に)
Pertesらの診断基準(1995)
1、 鈍痛、灼熱性疼痛、拍動性疼痛
2、 強度は中等度
3、 持続性あるいはほぼ持続性疼痛
4、 明らかな局所の原因は認められない
5、 X-Pで異常は認められない
6、 疼痛は4か月以上持続
7、 圧痛により感受性が上昇
8、 ブロックの効果は、あいまい
9、 鎮痛薬、外科処置、歯科処置では改善がえられない
2、病態生理
現時点では、わかっているとはいいがたい状態。
心因性とするものと、求心路遮断による神経因性疼痛とするものがある。
現在有力とされているのは、口腔顔面領域への外傷であるという仮説。(外傷、歯周外科、抜髄、歯内療法、歯根端切除、抜歯、インプラント、その他、歯の形成や下顎神経の伝達麻酔などの小外科でも起こりうるとしている。)
3、AOと歯髄関連の歯痛との鑑別診断
もっとも困難なのは、歯髄に起因する問題との鑑別。
以下にAOには見られて、通常の歯髄炎には見られない特徴を挙げる
1、 局所に明らかな原因が認められないにもかかわらず、持続性の疼痛が生じている
2、 冷温水痛、負荷などの局所刺激に対する反応は一貫しておらず、これらが常に疼痛を増悪させるとは限らない
3、 疼痛は数週間・数ヶ月にわたって変化なく持続している。(本当に歯が原因であれば、時間とともに改善したり、増悪するはずである)
4、 歯科治療を繰り返しても、疼痛改善は得られない
5、 局所麻酔に対する反応はあいまい
4、治療
いったん疼痛が始まると、歯科治療は状態を増悪させるだけで効果はないので、これ以上の歯科治療を避け、正しい治療を行う必要がある。
多くの研究が、三環系抗うつ薬単独か、これにフェノチアジンなどの抗精神病薬を加えることで、よい効果が得られると報告している。効果は、これらの薬物が精神状態(気分)を改善するからではなく、これらの薬の持つ鎮痛効果に由来する。
まず、20-25mgの低用量から開始し、副作用との兼ね合いをみながら徐々に増量する。鎮痛が得られたら、今度は逆に徐々に減量し、中止する。
基本的には、三環系抗うつ薬単独で治療し、抗精神病薬との併用は可能な限り後伸ばしにすること。
5、結語
不必要な歯科治療を避けるためにも、明らかな原因が認められない「歯痛」には慎重に対応しなければならない。さもないと、問題はより悪化する可能性がある。