A, 発作性神経痛paroxysmal neuralgia
発作性神経痛は特発性のものと症候性のものに大別される(後述)。診断の際には、症候性を除外する検査(脳のMRIやCT)を行うことが必須である。
a) 三叉神経痛(TGN)Trigeminal Neuralgia
定義
三叉神経の一つまたはそれ以上の枝の支配部に生じる短時間の電撃様疼痛で、顔面の片側に生じるもの (IASH committee)

IHS診断基準
A.数秒から2分以下の顔面と前頭部の発作性疼痛

B.疼痛は以下の項目のうち少なくとも4つを満たす:
1.疼痛は三叉神経の一枝またはそれ以上の枝の走行に沿って生じる
2.突発性の、強い表在性疼痛で、性状は鋭いsharp, 突き刺すようなstabbing or 灼熱性burningの疼痛
3.疼痛強度は激痛
4.疼痛はトリガーゾーンへの接触や、食事や会話、洗面、歯磨きなどのに日常的な行為で誘発される
5.発作と発作の合間には、全く症状がない

C.神経学的な欠陥はない

D. Attacks are stereotyped in the individual patient.

E.問診や検査で他の顔面痛の原因が除外されていること

特徴
年間10万人に4人
3000人のTN患者の内、症候性のものは1割、300人、
症候性のもののうち半数はCTやMRIでdetectされる
数週間から数ヶ月の発作期間とそれに続くremission period(数ヶ月から数年)
50%にtrigger zoneがある
Tic douloureuxという顔面筋の痙攣を伴うこともある
Secondary excitatory effectは伴わない

b) 舌咽神経痛(GPN)Grossopharingeal Neuralgia
舌咽神経痛(第IX脳神経痛)の臨床像はTMDに酷似している。
内科を受診するGPN患者の主訴は嚥下時痛であるのに対し、歯科を受診する患者は「大開口時痛」であることが多い。
顎関節症専門医が必ず鑑別診断リストに入れておくべき疾患。

IHS診断基準
A)数秒から2分持続する発作性疼痛

B) 以下のうち4つを満たす
1 片側性
2(疼痛部位)舌後方, 咽頭、下顎角部、耳
3(疼痛の性状)発作性、激烈な鋭痛または灼熱性
4(疼痛強度)激痛
5 咀嚼、嚥下、会話、咳嗽で誘発される

C)神経学的な異常所見が存在しない

D)発作はステレオタイプ

E)その他の原因が除外されていること

特徴
性状:数秒間の電撃様疼痛

部位:舌咽神経の支配領域である舌後方1/3、耳(鼓膜に分布)、下顎角、咽頭部にかけて発現(このため患者は、「(下)顎が痛い」と自覚する。)

誘発因子
1)顎運動(あくび、嚥下)=患者は「大きく口を開けると痛い」と訴える
2)味刺激(酸味や冷水)=「食事をすると顎が痛い」とも訴える
嚥下・顎運動・味刺激で激烈な疼痛が生じるため、患者はいっさいの飲食を拒否することがある
*解剖学的に迷走神経に近いため発作時に失神・心停止などの迷走神経症状を伴うことがある

鑑別診断(疼痛消失/誘発テスト)
疼痛消失試験
表面麻酔剤(8%キシロカインスプレー)を咽頭部と舌の後方1/3に噴霧し、疼痛発作が生じなくなることで診断する・
  疼痛誘発試験
舌咽神経の支配領域である舌の後方1/3に酢を塗布して発作が生じることで確認する。
疼痛が曖昧で診断しにくいときにのみ、最後の手段として使用する。
「鑑別」という点では非常にクリアな試験だが、「非人道的荒ワザ」とのそしりもある。
ある米国の先生は「発作を止める手段がないのに、誘発試験を行うのは、患者に対しフェアではない」と批判。