痛みの治療のために「トリプタノール」を服用される方へ

 

“トリプタノール”は商品名で、一般名(医学上の名前)は「アミトリプチリン」といい、「三環系抗うつ薬」の一種です。三環系抗うつ薬には、ほかにも「ノリトレン(ノルトリプチリン)」、「トフラニール(イミプラミン)」 「アナフラニール(クロミプラミン)」などがあり、どれも「慢性の持続性の痛み」に効果が期待できます。ただし、中でももっとも効果が証明されているものがトリプタノールであるため、ここでは「トリプタノール」について説明します。
以下の説明は、トリプタノール以外の三環系抗うつ薬をお使いの方にも、そのまま適応できます。

<トリプタノール服用上の注意>
1、 心臓の伝導異常(不整脈の一種)や緑内障(程度による)のある方は、服用できないことがあります。

2、 トリプタノールは「抗うつ薬」に分類されますが、同時に「慢性の痛みを抑える薬」として知られています。あなたの場合は「うつ」ではなく、「慢性疼痛」のためにこの薬が処方されています。慢性頭痛、慢性の神経痛などに非常に効果があります。

3、 トリプタノールは長期に使用しても、肝臓や腎臓などへの影響が少ない安全な薬として知られており、欧米で30年以上使用され続けています。

4、 長期的な安全性が確認されている薬ですが、一方で、使用直後(2-4週間ほど)には、いくつかの副作用が現れることがあります。代表的なものは「眠気」「口がかわく」「少し血圧が下がる(たちくらみ)」などです。これらの副作用は、薬の効果が発現し始めるのと入れ替わりに、だんだん消失しますので、すこし頑張って服用を続けてください。

5、 トリプタノールは効果発現までに2-4週間ほどかかります。効果がでないと焦らずに、4週間ほどは根気よく服用を続けることが大事です。(それでも効果がでない場合には、増量が必要です。)

6、 一度服用すると長時間(24時間)効果が持続します。薬は分けて飲む必要はなく、夕方7-8時ころに一日量をまとめて服用すれば結構です。

7、 痛みが長引くと「眠れない」ことが多くなってきます。トリプタノールの副作用の「眠気」をうまく使うと、ぐっすり眠れるようになります。このためには、ベッドに入る3-4時間(夕方7-8時ころ)に服用するのがよいでしょう。早めに服用することで、翌日の眠気も最小限に抑えられます。

8、 胃を荒らすことはありません。(このため、「食後」である必要はありません。)むしろ胃酸を押さえるため、食欲が増して体重が増加することがありますので、普段より食べ過ぎないよう注意してください。

<トリプタノールの主な副作用と対策>
1、 眠気

2、口が渇く:ペットボトルに水かお茶を用意し、たびたび口をしめらすとよいでしょう。

3,便秘:痛みを止めるためには、これもある程度我慢しなければなりません。下剤を一緒に処方してもらいましょう。

4,尿が出にくい(いきまないと出ない):膀胱を収縮させる筋の作用が弱まるために起こる症状です。程度の問題ですが、どうしても尿がでにくい場合には、ウブレチドという薬で改善します。

5,目のかすみ:瞳孔を収縮させる筋の作用が弱まるために起こる症状です。

6,手の指が震える(振戦):程度の問題ですが、ひどくなってきたら、服用を中止して、他の抗うつ薬に変更しなければなりません。

7,体重増加:食事の量を減らすか、運動をしてください。

8,薬剤性QT延長:150mg以上服用する場合は、心電図に異常が現れることがあります。この場合はただちに服用を中止して、他の抗うつ薬に変更しなければなりません。定期的に心電図をとって、モニターしていく必要があります。

<「副作用でトリプタノールが飲めない」という方に>
 皮疹がでる→この場合は、トリプタノールに対してアレルギーがあるため、トリプタノールは使えません。

 不整脈や緑内障がある→内科や眼科の医師と相談して、許可が出た場合には、トリプタノールによる治療を開始します。

 30mg(1日量)以下で眠気やめまい、動悸がする→どんな方でも30mg程度までは服用できるはずです。10-30mg程度の低容量で副作用が気になる方は、10mg錠を半分に割って5mgから開始するなどの工夫をして、ゆっくり増量していけば、必ず服用できます。もっと少量から開始してもいいので、あきらめずに、薬に体を慣らしながら使ってみてください。

 今まで服用していた精神安定剤や睡眠薬を中止し、トリプタノールに変更したら、30mgにもかかわらず、寝込むような副作用が生じた→精神安定剤や睡眠薬の多くはベンゾジアゼピン系の薬です。ベンゾジアゼピン系の薬には依存性があり、急に中止すると、吐き気や動悸、全身倦怠感などの離脱症状が生じます。トリプタノールの服用開始にあたり、今まで服用していた精神安定剤や睡眠薬を止めていただくことがありますが、これらの副作用は精神安定剤や睡眠薬の離脱症状で、トリプタノールの副作用ではありません。離脱症状は1週間ほどで消失しますが、離脱の仕方(精神安定剤の止め方)は主治医とよく相談して行う必要があります。