咬み合わせと頭痛の関係

1、「咬合治療で頭痛は治る」と主張することのリスク

頭痛は、顎関節症患者が訴える「他の身体的訴え」で、最も頻度の高いものです。したがって、歯科医の中には「顎関節症で頭痛が生じる」「咬合治療で頭痛も治る」と考えている人もいますが、正しい理解とはいえません。

第1に両者の間の因果関係は証明されていません。

第2に、「頭痛」は「歯痛」と同じく、症状名あるいは総称であり診断名ではありません。したがって、国際頭痛学会分類で179種類に分類されている頭痛のうちの「(**頭痛)は咬合治療で治る」と、どの頭痛かを特定した言い方をしなければ専門医には通用しません。
(「歯痛は抜髄で治る」というのと同じくらいナンセンスな言いかたです。)

第3に、現在頭痛(機能性頭痛)の研究は、世界の頭痛研究者により、遺伝子やレセプターレベルで行われており、そのメカニズムの解明は日進月歩です。その結果、片頭痛や群発頭痛などは、明らかに神経血管性の原因で生じている頭痛だと考えられるようになっています。したがって、これらの頭痛に対し咬合治療が有効と主張するのは無謀であり、もし主張するならば、専門学会を向こうにまわして説得し得るだけの証拠を提示する必要があります。

2、期待されている歯科医の頭痛研究への貢献

一方、筋の過緊張が原因と考えられている緊張型頭痛は、顎関節症に合併しやすい頭痛です。頭部前方位姿勢やブラキシズムが、緊張型頭痛の寄与因子である可能性は高く、その発症メカニズムが顎関節症と似ていると予想されています。
歯科には、筋の神経生理学的な研究を得意とする研究者が大勢いますから、このような知識を生かして顎関節症や緊張型頭痛のメカニズムを解明する研究が行われれば、頭痛研究に重要な貢献がなされると期待されています。

3、歯科疾患との鑑別診断が必要な頭痛がある

頭痛の中には、歯や顎関節に疼痛を生じさせるものがあります。このような場合、患者は歯科を受診することがありますが、一般的に歯科医師には十分な頭痛の知識がないため、適切な診断を行えず、抜髄や抜歯などの非可逆的で不必要な処置を行ってしまうことが少なくありません。口腔顔面部の複雑な疼痛の診断と治療には、頭痛の知識が必須です。