診断法
- 問診
- 診査(examination):視診、触診、脳神経診査、口腔内診査
- 精神・心理学的要因
- 検査(investigation) 全身疾患の除外
- Special investigations
I. 問診
1,構造化問診:痛みの診断のための問診法
2,SOCRATES(ソクラテス):痛みの診断のための問診法
3,Stanford Five (スタンフォード・ファイブ):「患者が経験している痛み」を知るための問診法
1,構造化問診
1) 診断をするときには、口腔顔面痛学会が指導している「構造化問診」を念頭に置くといいと思います。
- Location(部位):できるだけ範囲を絞り込む
- Quality(性状):鈍痛(筋骨格性の痛み)、拍動性(血管・炎症)、電撃様(発作性神経痛)、灼熱性(神経障害性疼痛)
- Intensity(強さ):VAS
- Duration(持続時間):秒、分、時間、日
- Frequency(頻度):回数
- Aggravating factor(増悪因子)または誘発因子:(例)群発頭痛ではアルコール摂取、心臓性歯痛では運動との相関
- Alleviating factor(改善因子):冷やす。暖める
- Behavior(発作中の行動):痛みで動けない、痛みでじたばたしている
「部位、痛みの性状、強度、持続時間、頻度」最低でもこの5つ、加えて改善因子、誘発・増悪因子が情報として重要です。特に診断に慣れていないときは、まずこれらを順番にカルテに書いてみることが有効です。特に重要なのは「痛みの性状」です。何に起因する痛みかを知るための大きなヒントになります。
2)これから連想される疾患をあげて検討します。なぜその疾患を除外したか、なぜこの疾患の疑いが濃厚と思うのか、それらを順序立てて考えます。
3)口腔顔面痛では、医科的な疾患に起因することが多いため、疑われる疾患によっては医科の専門医に依頼/照会する、その結果器質的疾患が除外できたら、身体化(特発性)を考えます。
4)しかしながら「身体化」は「除外(他が当てははまらないから)」で診断するのではなく、やはり問診で詰めていく必要があります。発症時に何らかの心理的インパクトを生じる出来事があったか、またその患者の日々の生活の背景にあるストレス要因、さらに現在抑うつ傾向はあるか、精神疾患の既往があるかなどを聞き取って、すなわち「裏を取って」診断する必要があります。心理検査も含めて、検査の数字で出るわけではなく、丁寧に問診しなければわからないことも多いので、ある意味身体疾患より診断に技術が必要です。
*口腔顔面部の痛みの半数は「特発性疼痛」なので、1-3は確実に、しかし手早くやって、4)には時間をかけます。
*診断をするためには、とにかく訓練と経験が必要です。特に「特発性疼痛」の場合は、一人でも多くの患者を診て、経験を積むことです。経験が少ないうちは、本当に「器質的異常がない」と診断していいのか、大きな迷いが生じるため、患者さんに対する態度も及び腰になります。またこのような患者さんは、医師の自信のなさを鋭く見抜いて不信感をつのらせます。
2,SOCRATES(ソクラテス)
- 部位 Site – 痛みの部位、または一番痛いところは?
- 発症 Onset – いつ始まったか?急に始まったのか、徐々に生じたのか?痛みは悪化しているか、改善しているのか?
- 性状 Character – どんな痛みですか?(上記参照)
- 関連痛 Radiation – その痛みはどこかに放散しているか?関連痛が生じているか?
- 随伴症状Associations
- 時間経過 Time course – 痛む時間にはパターンがあるのか?
- 増悪・改善因子Exacerbating/Relieving factors
- 強度 Severity
3,Stanford Five (スタンフォード・ファイブ)
患者がその痛みについてどのような基本的思い込み(primary belief system)を持っているかを訪ねて、患者の「痛みの経験」を評価するようデザインされた問診法。
- 原因 Cause: 体のどのような異常を痛みの原因だとおもっていますか?
- 意味 Meaning: この異常によって普通の日常生活が送れなくなってしまった、など痛みに関するsinister beliefs (災難、凶であるとの想い)。
- 痛みが生活に与えるインパクトImpact: この痛みによって生活上最も影響を受けて(困って)いるのは何か?仕事、社交、趣味、全般的なQOLなど。
- ゴール Goals:なにを最終的なゴールとして治療を受けたいのか?
- 治療 Treatment: この痛みを改善するために、現在そしてこれから、何をする必要があるとかんがえているか?
IV. 検査(investigation) 全身疾患の除外
画像検査(X線,CT,MRI)
血液検査
- 全血算、貧血除外
- ヘマチン,フェリチン,B12, 葉酸 –貧血による二次性BMSの除外
- 亜鉛
- 甲状腺機能低下
- HBA1c 糖尿病
- 抗体スクリーニング ENAs ANAs
- CRP ・血沈 (炎症の存在)