歯科臨床で頻度が高い口腔顔面痛疾患

「口腔顔面痛科」を受診する患者さんの病気で、頻度が高いものの典型的な症状です。
思い当たる患者さんの症状と比較して、それぞれの疾患と照らし合わせてください。
a) 突然または歯科処置をきっかけに生じた慢性疼痛:歯痛・顔面痛

b)三叉神経2/3枝領域に生じる瞬間的な電撃様疼痛:「歯がしみる」「義歯床下が痛い」(調整を繰り返すが痛みが取れない)

c) 大開口時・嚥下時に生じる、顎関節部の”瞬間的な”激痛

d) 数日前から発現した歯痛。鼻が詰まって風邪を引いている。

e) 2-3日前から歯にキリキリする鋭痛が生じた。痛みは24時間持続し、不眠をきたすほど強烈。

f) 上顎最後臼歯に「のたうちまわる」ような激痛発作。痛みの発作は連日、一日数回生じ、各1時間持続。

g) 臼歯部に軽度だが持続性の鈍痛。患歯が明示できない。

h) 片頭痛発作の最中に歯や顎に脈打つような痛みが生じる

i) 顎関節症に伴う頭が締め付けられるような頭痛

j) 60歳以上・開口障害、側頭部の接触時痛、全身倦怠感、発熱

k) 脳卒中の後、下顎に「ひりひり」「びりびり」する痛み

l)不随意的なくいしばり、顎の偏位、開口したまま閉口できない


a) 突然または歯科処置をきっかけに生じた慢性疼痛
1) 歯や歯肉に、一日中持続するじんじん・じわじわ・びりびりする持続性の痛みが発現
2) CTやMRIなどの検査で「脳には異常がない」といわれている
3) 痛みは耐えがたく、日常生活に支障が出ている

4)抜歯したが痛みに変化はなく、骨の中からしくしく痛む
5) 痛みの例:「半年以上も根治を終わらせることができない」、「犬歯が上顎に突き刺さるような痛み」、「上・下の前歯6本を針金でぎりぎり締めあげられるような痛み」、「目の下にぐうっと押されるような痛みが持続している」、「舌がひりひりする」
6) 痛みのため「歯根端切除術」「抜歯」「上顎洞炎の手術」「骨の生検(バイオプシ)」など、外科手術を受けてみたが治らない
→非定型歯痛・非定型顔面痛(PIPF:持続性特発性顔面痛)

b)三叉神経2/3枝領域に生じる瞬間的な電撃様疼痛
「きりきり」:入れ歯の下の粘膜がきりきり
1) 上顎犬歯のあたりがツーンとしみる
2) 義歯床下にきりきりという強い痛みが生じる、潰瘍はみあたらない
3) 食事時、食物が接触すると激しい痛みが生じる
4)触ると痛むので、歯磨きや洗面、髭剃りができない
三叉神経痛

c) 大開口時・嚥下時に生じる、顎関節部の”瞬間的な”激痛
<あくびや食事で、きりをもみ込まれるような激痛が数秒間生じる>
1) 大開口時、顎に瞬間的に強い痛みが生じる(涙がでるほど)
2) 顎関節から下顎角部にかけて、数秒間、突き刺すような痛みが生じる
3) 食事のし始めに、特にひどい
→舌咽神経痛


d) 数日前から発現した歯痛。鼻が詰まって風邪を引いている。
<歯に持続性鈍痛・頭痛や顔面の鈍痛を伴うこともある>
1) 上顎小臼歯部に鈍痛(「今夜あたり歯がすごく痛くなりそうな予感」がするような痛み)
2) 有髄あるいは根治良好にもかかわらず、強い打診痛がある
3) 風邪をひいて頭重感あり、鼻も詰まっている
→急性副鼻腔炎

e)  2-3日前から歯にキリキリする鋭痛が生じた。痛みは24時間持続し、不眠をきたすほど強烈。
<臼歯部に持続性の強い痛み・鎮痛剤が効かない>
1) 歯に突然「激痛」が生じ夜も眠れない。歯科医は「歯には異常がない」という
2) 鎮痛剤がきかない
3) ここ1週間以内に発熱した
4) ここ1週間ほど疲労がたまっていた
→帯状疱疹性歯痛(VZV(ウィルス性)歯髄炎)

f) 上顎最後臼歯に「のたうちまわる」ような激痛発作。
1) 歯に「のたうちまわるような大激痛!」
2) 「痛くて眠れない」「夜中に痛みで目がさめる」
3) 痛みは毎日または1日おきに生じる
4) お酒を飲むと必ず痛みが起きる
→群発頭痛(神経血管性頭痛)


g) 臼歯部に軽度だが持続性の鈍痛。患歯が明示できない。
1) 歯に、かすかだがいらいらするような鈍痛が生じ、一日中持続
2) 歯を噛みしめる癖がある。頭痛や肩こりを伴う
3) ストレスフル、過労または睡眠不足の状態が続いている
→筋筋膜痛(筋骨格性疼痛)

h) 片頭痛発作の最中に歯や顎に脈打つような痛みが生じる
1) 歯や顎に拍動性の疼痛
2) 頭痛と吐き気を伴う
3) 過去に何度か同じ痛みを経験している
→片頭痛・下顔面片頭痛Lower Half Migrane(神経血管性頭痛)


i) 顎関節症に伴う頭が締め付けられるような頭痛
<顎関節症だといわれたが、頭も痛い>
1) 顎関節症に合併する頭痛
2) 両側こめかみの締め付けられるような痛み
3) 市販の鎮痛剤で痛みが収まる
→緊張型頭痛(11-7顎関節症による頭痛:ICHD-3β)

j) 60歳以上・開口障害、側頭部の接触時痛、全身倦怠感、発熱
1) 60歳以上である
2)  しばらく前から、開口障害が発現
3) 咀嚼時に咬筋や顎に痛みが発現するため、休み休み食事をしている
4)側頭部にちくちくするような頭痛と全身倦怠感がある
→側頭動脈炎(自己免疫疾患)

k) 脳卒中の後、下顎に「ひりひり」「びりびり」する痛み
1) 片側の下顎に、やけどの後のようなひりひりする痛みが絶え間なく生じている
2) 皮膚や歯肉には異常がなく、歯医者の麻酔(伝達麻酔)も効かない
3) 脳卒中の既往がある
→視床痛(中枢性の神経因性疼痛)

l)運動障害:不随意的なくいしばり、顎の偏位、開口したまま閉口できない

突然の顎位の変化:下顎が片側に偏位した/前突したままになってしまった。自分の意思に反し食いしばってしまう

→ジストニア
a) 咬筋バージョン
1)自分の意志に反してくいしばってしまう
2) 見えないマイオモニターを装着しているかのように、咬筋の収縮が肉眼で観察できる

b) 外側翼突筋バージョン
片側の場合
1) 顎が片方に偏位したきりになり、自分の意志ではもどせない
両側の場合
1) 開口したままで、自分の意志では閉口できない
2) 咀嚼を始めようとすると、いきなり下顎が前突してもどせない